秘密 himitsu 真実 shinjitsu

楓が少し動いたからでしょうか、ご主人様はふと目を覚まされたようでした。
ご主人様は、お布団にもぐっていた楓が息苦しいと思ってくださったのか、
楓をご主人様の腕の中に呼んでくださって、そのまままた少しお休みになりました。
楓はその暖かい腕の中で、ご主人様がおそばに居てくださる幸せをかみしめていました。

ご主人様は、楓を叱ってくださることはあっても、怒ったりなさらない。
この長い間、楓の我儘をお許しくださって、その上いつまでも課題をクリアできない楓に
時々ヒントをくださりながら、静かに見守ってくださっていたご主人様。
そして、お忙しい中でも、こうしてすぐにご褒美をくださる優しいご主人様です。
楓はそんなご主人様に、何をお返しできるだろう・・・

お誕生日にも、クリスマスにも、楓はご主人様にプレゼントをしたことがありません。
それは、ご主人様のお手元に何かを残すことが憚られるためでしたが、
ご主人様に喜んでいただけるようなものを差し上げる自信がないせいでもありました。
せめて「消え物」のチョコレートをプレゼントできるバレンタインデーくらいは、と思いつつ、
その時期ですら、デザートにチョコレートケーキを選ぶのが精一杯でした。

でも、あまりに長い間お会いできなかったためか、なんだかご主人様を遠く感じてしまい、
今年はチョコレートだけでも、きちんとプレゼントとしてお贈りしたいと思っていました。
当初、３月くらいにはお会いできるかとも思っていましたし、
まさかこれほど遅れるとは思いませんでしたが、今回は小さなプレゼントを用意しました。

帰る時間が迫っていましたが、忘れていたデザート（ちょっと控えめにプリンにしました）を
いつものように半分ずついただきながら、いろいろなお話を聞かせていただいたあと、
帰り支度をしながら、楓はバッグから小さな箱を取り出しました。